一歩外に出ると。

穂花はやたらと「ごめんなさい」「申し訳ありません」と連呼しまくるクセがある。

もう殆んど習慣になってる。

 

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単純に車椅子は邪魔臭いのだ。

歩道を通るにもものすごく幅を取る。

バスに乗るにもいちいち運転手さんにスロープを出してもらわなくちゃいけない、

めっちゃ時間を要する。

ラッシュアワーの電車に乗ろうなんて思ったらさ…。

穂花の車椅子一台分のスペースでおよそ先を急ぐ5人は乗車出来るもんで…。

なるべく混雑している時間帯はご遠慮申し上げているけど、それでも仕事なんかで、

どうしようもない場合も多々あって…。

デブった身体をピンク色の車椅子ごと極力ちっちゃくしてスミマセン…と繰り返す。

 

本当にウザい自分なんだろうなあと常に思ってる。

 

障害者だからって権利を主張しまくっていいとは到底思ってはいないんだよ。

フツーに考えて車椅子はやっぱり邪魔。

 

 

だけどね。よく見渡すと…車椅子の穂花と同じくらい邪魔臭い奴もいるよ。

歩道を横に並んで広がって歩く人たち。

バスの車内で油臭いにおいの強いものを平気で食べる人。声高に喋っている人。

電車内で座席に素知らぬ顔をして荷物を置く人。足を広げて腰掛ける人…etc.etc.

 

 

それでも。穂花もやっぱりなるべくならトラぶりたくはない。

だからどうでもいい場面においても過剰にごめんなさい、と繰り返してしまう。

自閉症で空気が読めていない、ということも自覚はしてるから、

それも余計に穂花に意味もない謝罪の言葉を言わせている。

…だからって決して空気が読めているわけではないから、妙にちぐはぐな台詞になっている。

 

 

先手を打ってごめんなさい、そういえば済むんだよね。

子どもの時からカラダに染み付いている発想だけど、この発想が穂花をトラブルから、

守ってくれたんだよね…って経験も大してない。

それでも、なんかある種の呪文みたいにごめんなさいという自分。

 

いつもいつもあなたはバカな子だ、「普通」より劣っているのだ。

そう言われてきた。

インプリンティングされまくってはなれない。

 

 

「差別」って言葉は響き自体が鋭いから、

ものすごく重たく思われがちだけど穂花的には。

一般的なひとと「差」があるから、

それを言質に他のひとと「別れさせられる、分けられている」。

そのくらいの認識しかない、正直。

だいたい、ひとりひとり顔が違うように出せる力も違う、考えていることも違う。

だから時にそこら辺に基づいてわかれたりわけられたりしてもいいんだ。

それでも…やっぱりなんか違うと思う。

生きていくのってしんどいし面倒臭いな。

 

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以下に車椅子ユーザーの穂花が「なんか違う」と思ってしまうことを羅列する。

 

*スーパーや百円ショップ、普通のお洋服屋さんなどにお買い物に行くと、

車椅子ではどう考えても通れないほどの通路しか設けてなくて、

かつ車椅子ユーザーの手には商品が手に届かない位置にしかディスプレイがなされていない。

*化粧直ししたくても車椅子トイレに鏡がない

*トイレネタが続くんだけど、多機能トイレのおむつ替え用マルチシートや、

乳幼児用チェア、フィッティングシートなどが使用後畳まれずにそのまま放置されている。

幾ら車椅子トイレが整備されていたとしても、

そういうものが使用後そのままになっていると、

実際には入室出来ないことも多い。

*ファミレスにボックス席しかなく、車椅子ごと入店出来ない。

椅子が外せる席があって車椅子ごと着席が叶っても、喫煙席オンリーだったり、

隣の人が平気で私物を置いて使えなかったり。

さすがにこちらから「お荷物を退かしていただいてもいいですか?」みたいなことは言えないし。

こちらからお願いしていないのにいきなり無言で穂花の車椅子を押そうとする人がいる。

穂花の車椅子は完全な自走用であり、慣れない方が押されるとお互いにけがをする危険性が高い。

そういう人に限って「私、親の介護経験があるの」みたいに言って迫ってくるけれども、

車椅子はその形状によって介助の仕方が全く違うということも知ってほしい。

穂花は過去にそういう人によって実際に三回けがをしているし、もっとイヤなのは、

こちらからお願いはしていないにせよ、好意で手を貸してくれた方までが、

けがしてしまうこと。

*繰り返しになるけれども、障害者のほうからお願いするまでは手を貸さないでほしい。

穂花みたいに安全面を懸念している場合もあるし、なるべく自立したいと願っている人もいるし。

もし、手を貸そうとされた方のご好意をこちらがお断りすることがあっても、

一転「障害者のくせに生意気ね、こちらが親切にしてあげてんのに!」と、

気分を害して怒らないでいただきたい、こちらもお断りするだけの理由があるのだから。

歩けなくなった理由やいきなり「福祉のお金、どれくらいもらってるの…」みたいなことを、

初対面のくせに社交辞令のごとく話しかけないでほしい。

穂花はフツーに働いてるよ。車椅子に乗った障害者=生活保護受給者、ではないし。

なんかかわいそうな人だから…福祉のカネもらっても仕方ないわよね。

その点…私はこんな風じゃなくってよかった、

みたいな上から目線な空気をものすごく感じて気分が悪い。

常識的に考えてそういう、

病気のことだとかインカムの話を世間話感覚で見知らぬ人とは出来ないもの。

それをなぜ…車椅子に乗った相手であれば当たり前の話題だと思うのか???だよ。

 

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ごめんなさい、なんかいっぱいイヤなことを言っちゃった。

あ…ごめんなさいって、

また何の脈絡もなく言ってしまった。なんか違うよね。

 

せめて。ごめんなさいの十回にいちどは、

ありがとう、という言葉に置き換えられるような穂花になりたい。

 

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