…泣いてるよ。
人生は綺麗事では何一つ説明がつかない性質だ。
なんでそこに意味を持たせるんだろう。
穂花は非常に人嫌いだけど…
それについてももう一切恥じないよ。
自分も他人もみんな嫌いだと、
そう堂々と公言できる穂花になれたらむしろ本望だよ。
穂花に意見する一般の方々が、
当たり前の如く手に入れたもののどれひとつさえも、
穂花は手に入れられなかった。
決して努力を怠ったわけでも何でもないのに…
穂花の願いは一つも叶わなかった。
――例え障害を持って生まれても、
生命そのものは維持出来るようになったよ。
同じく…昔だったら死ぬレベルの病気を経験しても、
延命だけならある程度は叶う現代だよ。
だけどね。
医学の進歩を穂花は全く喜べないよ、
こんなに苦しいだけならあっさり死にたかった。
毎晩思うよ、このまま目が覚めませんようにって。
そんな穂花を、
いったい誰が不遜だといえるんだろう。
――泣けば済むんだったら、
ただ泣けばいいんだ。
こっそり泣いている分には誰にも気づかれない、
誰のことも傷つけない。
もういいんだ…
これで…
そして。
穂花は一晩中泣き続けていた。