ちょうど二年前の今日。
穂花は予てより治療中の病気のため都内の病院で手術を受け、
女性としてのパーツを全て失った。

オペ前夜から穂花はものすごく心が荒れて…
周囲に対しコントロール不能になって暴言を吐きまくった。
ひどすぎる言葉を吐くのを止められない自分に…
さらに惨めな気分に陥った。

病院の渡り廊下の窓から遠くに打ち上げられる花火を眺めた。
これで何もかもが終わったんだ…と穂花は思った。

病室に戻って…激しく穂花は泣いた。
イキオイでそのままてんかん発作。

翌日の手術はてんかんのために延期も検討されたけれども…
数時間遅れたものの、どうにか予定通り2015年8月3日に実施、執刀。

――手術が決まったのがちょうど七夕の話。

当時、離婚係争中だった元夫との問題の絡みも影響して、
オペが必要な状況にありながら三年以上経過観察を余儀なくされていたけど。

根治手術以外に治療の方法がないといったん決まったら。
あとはところてんみたいだった。

手術の準備、合間に(体調不良を押しての)引越し。
入院のための検査をして…問題がなかったので事務的な手続きを進めて入院。
実際のオペのための検査、
検査の合間に時々烈しい出血をみて輸血の処置を受け。

7月7日、子宮その他女性内性器一式の摘出が決定して、
一ヶ月も経たないうちに身体にメスが入れられ、
穂花の下腹部には派手な創が出来た。

――穂花は産婦人科病棟に入院してた。

穂花の病室の向かいの部屋では、
無事お産を終えた若いお母さんたちが、
家族に囲まれてそれぞれ幸せそうな笑顔を浮かべていた。

新生児室からは元気な泣き声も響いてきた。

ちょうど夏休みの時期でもあり、子どもさんの見舞いも多かった。

仕方ないといえばそうなんだけど…
子どもはエネルギーに満ち溢れているせいか、
病棟においても走り回り、空気など読まずに甲高い声を上げて騒ぐ。

それらの全てが術後の穂花には耐えられなかった。

病院にいるの自体が余りにもストレスになっちゃったから。
長崎原爆忌を待たずに、
術後5日目、抜糸も出来ていないまま穂花は退院して…

お腹の傷がうまく治らなかったことにより高熱を出し…
慌てて救急外来に連絡、また病院に戻る羽目に。

生きてるって本当にバカみたいだなあって。
ドクターに処置をなされながら、熱でぼんやりした頭で穂花は考えていた。

それから一か月後、
妻として三度も調停を申し立てても…三回とも不成立。
あんなに裁判所でケンカし続け、最終的には提訴となった…
元夫との離婚が…手術を経て、
東京家裁の法廷であっさりと決まった。

リコンが決まっても…実際にはいろんな取り決めがあるから。
役所に離婚届けを提出したのは11月の話だったけどね。

それにしても…穂花が失ったものは多かったな。

元夫とは…喧嘩両成敗はとても割り切れないくらいに、
穂花は心身ともに傷ついた。

役所の戸籍課に離婚届けを提出した足で…穂花ちゃんは内科受診。
内科の先生曰く、
うちでは治療できないよと紹介状を持たされて転院。

結果、重症のうつ状態で入院加療が必要と診断され…
そのまま三ヶ月も(開放病棟でしたが)精神科病院のお世話になりました。

穂花の人生において33回目になる精神科入院中に、
会社を退職したり、合併症をきたして一般科病院を受診。
精神科退院予定後の5月に、また手術が決まったり…

することがない?から。
ひとまずランサーズに登録して再びライター稼業に手を染めたり。

…自分の誕生日に行われたオペの直後、
ランサーズ登録後二ヶ月半でいわゆる認定ランサーになるも。

現実にはクライアントさんとのトラブル対応など、
ライターとしての本業を超えた、ワリが合わない仕事ばかりで…

ヘタレな穂花は思わずランサーズを退会しちゃって。

ランサーズ退会後、穂花は現在の事務所に移籍。
――原稿を書き貯める片手間に、
今ご覧いただいているこのサイト開設の準備をしていました。

そののちも穂花の病状は一進一退を繰り返しています。

――相手もあることだったのでリコンを早めることそのものは…
難しかったにせよ。

もっと自分を大切にすればよかったとただ後悔しかありません。

――がんばろうなんて思わなければよかった。
自分を大切にしてくれない場所からは逃げればよかった。
負けてもよかった。

法的なことなんてもしかしたら後でも解決できたのかも知れなかった…
逃げればよかった、
福祉の制度でも何でも活用して助かることだけ思えばよかった。

もっと大きな声で助けて!っていえばよかった。

肉体的に元気でありさえすれば…今でも十分リベンジは可能だったのに。
穂花はひたすらバカだった。

今年の夏もベッドで寝ているしかない療養中の自分。
これがアラフィフの穂花のリアルです。

ついでに…婦人科手術後。
年齢的なものもあるんでしょうが…イッキに更年期障害が表出。

百年の恋も冷めるんじゃないかと感じるレベルの、
あり得ないほど加齢臭が漂う自分の肉体…これもまた、
五十歳を控えた穂花の痛すぎる真実です。

本当にね…
治療のために致し方なかったにせよね。

どうしても湧いてくる「もう女の子のカラダじゃなくなったんだ」という、
ネガティブな想いに加え。

自身でもキャパ越えレベルの体臭に穂花は…
もう恋なんてしない…って、
まるでマッキーの懐かしい曲のタイトルみたいな心持。

とにかく。さらに自己の肉体に対するセルフイメージが悪くなりました。

だからこそ、もっともっと自分を大切にしなくてはと…
これ以上ボロボロにならないように、
ボロボロにされないようにと…今は病床で時折涙さえ零しています。

オトコと付き合わなければ弄ばれることもないし…
ボロボロにされるリスクも回避出来るしね、まあ(笑…えない)。

穂花に限らず。幾ら自信を過信し、
あるいは自分を誤魔化して騙して「がんばって」いたとしても。

心身にムリが利く若い日は知らず知らずのうちに過ぎていくものです。

生きていれば五十歳なんてあっという間に訪れます。

だから。人生の後半戦を充実させるために、
恋愛だとか結婚だとか出産だとか…そういうライフイベント以前に。

女性も男性も関係なく、
皆さん、自分の心と身体に正直で素直であってください。
正しい意味で自分を大切にしてください。

――月並みですが「後悔先に立たず」です。

五十歳前の穂花が全身疼痛に苛まれながら、今皆さんに申し上げたいのは…
「自分をもっと大切にして」の一言に尽きます。

あなた自身をもっと真の意味で愛してください、
世界にたったひとりしか存在しない、大切なあなた自身のことを。

前田穂花