本日10月17日はユニセフによる「貧困撲滅のための国際デー」。
世界のみならず、
日本でも「子どもの貧困」に対する取り組みの前進と徹底について、
さまざまな協議がなされた一日でしたが。
車椅子に乗っている私は、
当事者として「障害者の貧困」について想いを馳せてみます。
全国の障害者福祉作業所で作る団体「きょうされん」の2012年から今日までの調査と、
百瀬優・流通経済大学准教授による考察 2015※ によれば。
障害者の生活の実態は以下の通り。
<2人に1人は相対的貧困以下、99%は年収200万円以下>
<そのうち、全体の66%は年収100万円以下>
<生活保護の受給率は、障害のない人の6倍以上>
<6割弱が「親との同居」>
<低収入ほど社会と遠ざかる>
<結婚している人は4%台>
障がい者雇用率の云々とは騒がれていても。
音頭を取っているはずのお役所が雇用数を水増ししているくらいなので…
実態は推して知るべし。
障害者自身が働きたいと願ってはいても、
ハローワークによる職業紹介のミスマッチに起因する定着率の悪さ。
もとより求人数の少なさもあって、30社や40社の応募や、
そして企業からの「お祈り」メールは当たり前の「障がい者就活」の実態。
そもそも最低賃金(障害種別、等級によってはそれ以下の賃金も合法)での雇用では、
人間らしい生活は約束されません。
また。
よく勘違いされがちな話ですが。
障害者は医療費がタダ、という噂は本当に「ウワサ」です。
私たち障害者は「障害」を負っている分、
どうしても通院や入院の頻度が健常者の皆様より多いことは否めませんが。
医療費の公費扶助があるのは手帳の等級で身体1級及び2級(内部障害は3級)。
知的障害はA1~A2、その他地域によっては精神1級。
つまり扶助が受けられるのは重度障害を有する一部の障害当事者だけ。
それも全額無料というわけでは決してありません。
あるいは、重度障害者に対する医療扶助も。
自治体によっては「償還払い」という制度がとられています。
公費負担が認められている障害者は一旦医療機関の窓口で病院代を支払った上で、
のちに区役所や市役所の障害福祉課に医療費の還付を請求する仕組みです。
償還払い制度の存在によって「障害者の無用な診療代、医療費が抑えられる」。
そう説明する自治体も多いのですが。
実際には…年収100万円以下の状況で、
病院代を一時的にでも立て替えて支払うことは非常に厳しく、
受診を控えているうちに手遅れの病状に陥ってしまう当事者も少なくはありません。
それでも公費で医療費が保障されている分、
マシなのかも知れません。
上記以外の障害者は健常者と同じく3割の自己負担で病院を受診します。
必要経費としての病院代で私たちの日常は非常に逼迫しています。
医療費ひとつとっても私たちの生活は本当にギリギリです。
よく「障害者サマ特権」などとネット上で揶揄されがちな私たちですが…
狡いことを行う障害者も皆無ではありません。
でもそれは、健常者の世界にも真面目な人と汚い人とが混在しているのと同じです。
「障害者」だから…
私たちが全員税金を湯水のように使う狡い存在、では決してありません。
ましてや社会における特権階級の「障害者サマ」なんかじゃ決してありません。
大多数の障害者はギリギリのところで喘いでいます。
厚労省の2018年度調査によれば、
現代の日本では六人にひとりが何かしらの理由で障害者手帳を有しています。
手帳こそ申請できていないけれども障害の状態にある人を含めれば、
ハンディキャップによって日常生活に支障が生じる方はもっと多いことでしょう。
しかしながら、健常者の皆さんがご存じない部分として、
現実に障害年金がもらえる障害者数は障害者全体の二割程度。
本来障害者にとってセーフティネットであるはずの障害年金すら、
制度上の制約があって大半の障害者は受給できないのです。
しかも「絵に描いた餅」でしかない障害者雇用の背景のもと。
働きたいと望んでも実際には雇用されず、
企業での就労経験が得られない大多数の障害者が受給せざるを得ない障害基礎年金の場合、
月額は1級で約80000円、2級で64000円です。
これは生活保護費以下の金額です。
障害者の中にも、一定数狡く立ち回る人が存在する事実については、
私も否定しません。
ただ、大多数の障害当事者は人間らしい生活自体保障されることなく、
ひたすら貧困の現実に喘ぎつつ、
ひととしての尊厳すら奪われて生涯を終えます。
落ち着いてちょっと調べれば。
ネット上でも公的機関の発表による正しいデータは幾つも散見できます。
障害者だけ優遇される社会は狡い!と思われる方があるなら、
まずは冷静に事実を調べてみてください。
私たちは「障害者サマ」でも特権階級でもない、厳しい生活を強いられているので。
そこは厳しい生活を押し付けられている健常者のあなたと同じなので。
前田 穂花
※日本障害者協議会2015連続講座
「障害者の所得の状況と求められる所得保障政策」百瀬優 2016年1月25日より引用